「世界を回す側」になる練習
4月末に生徒会の委員総会が開かれました。図書、体育、美化など各実行委員会の役割や年間目標を確認する恒例行事ですが、今年は少し趣向が変わり、校長が全校生徒に対して質問・要望・意見に答える場となりました。
私は新年度のテーマに「生徒会の活性化」を掲げています。また、始業式では生徒諸君に「おもしろい学校を作るのが私の目標だけれど、校長が変わったくらいで学校がおもしろくなるわけがない。皆さんがこの学校をおもしろくしてほしい」と話しました。
今回の企画は、まさに「こうすれば学校はもっと良くなる・おもしろくなる」と生徒の声を聞く機会。我が意を得たりとうれしくなりました。生徒会と一緒に企画を練ったT先生は「大変ですねぇ」とニヤニヤしていましたが。
当日は、体育館の壇上に討論会のような配置で生徒会諸君と校長が対峙するスタイルとなりました。たくさん寄せられた意見や要望から、事前に生徒会が7つ重点項目をピックアップ。ステージの壁に各テーマが大きく映し出されて、約860人の生徒たちに直接、校長が答えるという趣向です。
7つの項目の中で、生徒の反応が大きかったのは校則・ルールに関することと、柏葉祭(文化祭)に関することでした。どちらも関心が高いだろうなと、予想していました。大事なテーマですし、それぞれ別の機会に校長ブログでとりあげようと思います。
今日はあえて、小さな項目について書きます。
それは掃除道具です。
要するに「今の掃除道具が使いにくいので買い替えてほしい」という要望でした。
根が新聞記者気質ですので、まずは事前取材。集会の前週に教室に行って、実際に掃除道具を使ってみました。確かに、床用のワイパーは少し特殊な素材で、ちりとりは小さく、ほこりを掃き取るのに少し手間がかかりそうだな、と感じました。
週2回、全校生徒で唱和する「生徒目標」にも「進んで勤労に参加し、清潔な環境をつくる」とあるくらい、学びの場を生徒自らがきれいに保つことを大事なことと位置付けてもいます。
真っ当な要求だから買い替えを検討しよう、と考えたところで、ふと、「それでいいのかな」と思い直しました。
そして集会の場では、あらましこんな返答をしました。
「君たちがいう通り、掃除道具は買い替え時かもしれない。でも『変えてください』『はい、どうぞ』は、もう高校生なんだから、ちょっと違うと思う。掃除するのは君たち自身です。どんな道具がいいのか、調べてください。その上で、全部の教室を入れ替えたらいくらかかるのか、見積書を持ってきてください。そうしたら買い替えを検討します」
ボールを生徒側に投げ返したのには、前段があります。1年生諸君が参加した「合宿講習」で、私はこんな話をしました。
高校生は子どもから大人にかわる中途半端な年ごろだ。子どもと大人の違いは何か。色んな答えがあるけれど、私は「世界を回す側」と「回っている世界に乗っかる側」だと思う。「ケアする側」と「ケアされる側」と言ってもいい。この合宿講習にしても、旅行会社の人、ホテルの人、先生方が準備をしてくれて、君たちはそこに乗っかるだけでいい。
今は子どもだから、それでいい。でも、これから10年くらいかけて、君たちは大人になる。乗っけてもらうのではなく、「世界を回す側」になる。高校はその第一歩の時期だ。失敗してもいいから、「回す側」になる心構えを持って、いろいろと試してほしい。
掃除道具を選ぶこと、購入費用を調べてみることは、小さなことです。
でも、そんな小さなことの積み重ねで、世界は回っています。
そうそう買い替えるものでもないので、今の生徒諸君の選択は、まだ見ぬ後輩たちにも影響を与えるでしょう。
新兵器が配備されたら、「今日のSHODAI」でご紹介します。
生徒諸君、「さすが」と思わせる見積書が出てくるのを楽しみにしています。
今日のSHODAI

iPadを使った呼び出しシステム、作ったのはH先生です。すごい。