「やる時には、やる」ことの価値
4月16日(水)~18日(金)の日程で新入生の合宿講習を行いました。
半世紀以上、私が生まれる前(今年で53歳です)からの歴史を持つ伝統行事です。
生徒にとって、合宿講習といえば「黙食」でしょう。
「コロナの頃にやった、アレね」と思った皆さん、アレとは一味違います。合宿講習の黙食は「できるだけ喋らない」ではなく、「一切喋らない」です。
食事に集中して食材やそれを提供してくれる人たちへの感謝の念を新たにする、規律をもって行動する大切さを知る、といった効果を狙った独特のスタイルです。いつから始まったのかはっきりしませんが、少なくとも数十年という単位で続けられてきたようです。昔の指導はさぞや厳しかったとか。
実は私、昨年も顧問として合宿講習に参加したのですが、すべての食事でこの黙食が徹底されるのに度肝を抜かれました。
宿についた最初の昼食で、隣の人に「おいしいね、これ」と言えないのが思いのほか辛かったのをよく覚えています。
今年は黙食をとりやめて、食事の際は会話を楽しめるようにしました。
合宿講習に参加してくれた生徒会会長・副会長の3人(みんな3年生)が「え! 黙食じゃないんですか!」と驚いていました。
黙食をやめたのは、今回の合宿講習の一番大事な目標を「誰とでも話してみる」としたからです。その理由は末尾に載せたしおりの文章をご覧ください。
いずれにせよ、第一目標と黙食は相いれない。検討した結果、黙食は合宿中に一度だけやることとしました。
「全部黙食」はやめましたが、第2の目標を「やる時は、やる」として、時間やスケジュールを守ること、規律を保つことの大切さを学ぶ軸は変えませんでした。
「今はやる時だ」と思ったら、きっちり、やる。
集団行動が求められる場を快適かつ効率的に「回す」ために、規律が大切なことなのは言うまでもありません。
それにとどまらず、メリハリのある行動を身につけることは、生きていくうえでとても大きな財産、武器になります。
生徒諸君は、準備集会や合宿期間中、私や他の教員からくどいほど「5分前行動を」と言われて「うるさいな」と感じたかもしれない。
でも、最初は「やらされ感」を抱くかもしれないけれど、自分でメリハリのある行動ができるようになれば、「こっちの方が、気分がいい」と気づくはずです。
自分の気分がいいだけではありません。
「やる時は、やる」人は、同じように「やる時は、やる」人から、信頼されます。
私は30年近く新聞記者をやっていました。
締め切りを必ず守る。
毎回、プロとして恥ずかしくないクオリティーを出す。
自分の取材や記事に責任を持つ。
大事な仕事は、そういう「やる時は、やる」人にしか回ってきません。
そして、大事な仕事ほど、やりがいがあって、面白いものです。
さらに言えば、信頼と自由はつながっています。
「こいつは『やる時は、やる』よな」と信頼されれば、仕事の中身や進め方、スケジュール管理は「任せたから、うまくやってくれ」となる。
オンとオフの切り替えが苦手な人はいます。高校1年生ならなおさらです。
合宿中は「そんなクラスメートがいたらフォローしてあげよう」と伝えました。
一人ひとりが心がけて動き、チームとしてクラスメートを助け、1学年全体で「やる時は、やる」を実現する。
そうやって信頼を築けば、ガミガミとうるさいことを言うつもりはないよ、と。
結果を言えば、合宿2日目の昼頃には「やる時は、やる」という姿勢が全体に浸透して、移動や食事、各種プログラムもとてもスムーズに進行するようになりました。
先生方の間でも「75期生は、メリハリをつけられる生徒がそろっている」という声が増えました。
最終日、大学のキャンパス内で行った解散式で生徒たちを見渡すと、出発前とは顔つきが変わっていました。
居並ぶ、ちょっと自信がついた(でもちょっと疲れた)顔を前に、私は「今がこれを習慣化するチャンスだよ」という話をしました。
慣れるまでは気が張って疲れるかもしれない。でも、習慣になってしまえば、自然とオンとオフの切り替えができるようになる。
高校生活には、習慣化をアシストしてくれる便利なものがあります。
それは、チャイムです。
チャイムがなり、授業の時間になったら「やる時」のスイッチをオンにする。
大学でも会社でも、チャイムは鳴りません。
75期生の諸君が合宿の成果を生かして、自分でオンとオフの切り替えがしっかりできるようになることを期待します。
「誰とでも、話そう」校長 高井 宏章
(合宿講習のしおりより)
合宿講習は、皆さんの高校生活における最初の大きなイベントです。これからの3年間をともに過ごす仲間と、ゆっくり触れ合える最初の機会でもあります。
ぜひ、同じクラスの人たちとたくさん話してみてください。
自分のクラスの担任だけでなく、他の先生方(私も含めて)とも話すチャンスを探してみましょう。
生徒会の先輩たちも参加しています。何でも気軽に聞いてみましょう。
これからの3年間、皆さんは多くの時間を学校で過ごします。
有意義な学校生活を送るため、学校を安心できる「あなたの居場所」にしてほしい。
その土台となるのが、クラスメートや先生方、部活動の友人などとの人間関係です。
人間、誰とでも仲良しこよしの友だちになれるわけではありません。
でも、誰とでも話すことはできます。
100%の共感や同意ができなくても、歩み寄り、互いを尊重することはできます。
もちろん、信頼できる友人ができれば、それほど頼もしいことはありません。
「誰とでも話してみる」――これが合宿講習の一番の目標です。
合宿講習は、千葉商科大学付属生としての土台作りの第一歩でもあります。
気持ちよく、充実した集団行動を実現するためには、「やる時にはやる」という心構えが何より大切です。
親睦を深めるイベントや企画の時間は元気よく楽しみ、講話の時間には静かに先生方の話に集中しましょう。
集合や行動の時間を守る「5分前行動」のルールも、しっかり意識してください。
メリハリのある行動を身につけること――これが2番目の目標です。
3つ目の目標は、学校をよく知ることです。
学校生活のルール、勉強や進路のこと、皆さんの心身を守る仕組み、この高校ならではの特徴など、先生方や先輩たちから話を聞く機会をたくさん用意しています。
付属校は長い歴史と伝統を持っています。
学校の歴史や、長年受け継がれてきた「柏葉の精神」、教育目標・生徒目標についても学んでもらいます。
聞きたいことや疑問があれば、どんどん質問しましょう。
この合宿講習が、皆さんの素晴らしい高校生活の第一歩になることを期待しています。
校長ブログは私が個人で運営する「高井宏章のnote(https://note.com/hirotakai)」にも転載しています。noteをご利用の方はマガジンをフォローしていただければ幸いです。
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