時間を溶かすか、積み重ねるか
4月5日、第75期の新入生261名を迎える入学式を執り行いました。
晴天に恵まれ、満開の桜のもと、生徒とご家族・保護者のたくさんの笑顔があふれる素晴らしい式になりました。
校長ブログ第2回として、入学式の校長式辞をテキストでお届けします。
本番ではマイクのスイッチがなかなか見つからず、少々焦ってしまいました……
新入生だけでなく、2年生、3年生の皆さんにも、しっかり考えてほしいテーマを取り上げています。読んでみてください。
校長式辞
ようこそ、千葉商科大学付属高校へ。この4月から第6代校長になりました、高井です。
本日、伝統ある本校に第75期生として皆さんを迎えられることを、心からうれしく思います。
ご家族・保護者の皆さま、お子さまのご入学、誠におめでとうございます。
生徒諸君。君たちは、これからの3年間をこの学校で過ごします。
どんな高校生活にしたいのか、すでに、しっかりイメージを持っている人もいるでしょう。これから目標を探そう、そんな人もいると思います。
先日、花巻東高校野球部の佐々木洋監督のインタビュー記事を読みました。大谷翔平選手や菊池雄星選手を育てあげた監督です。そのインタビューの中に、こんな言葉がありました。
「高校は人生の滑走路だ」
「どこに飛び立つかが大事だ」
どこに飛び立ち、どんな人生を送るのか。
これからの3年間という時間が、それを大きく左右します。
昔から、「時間は誰にでも平等だ」と言われます。
どんな権力者でも、どんな大富豪でも、時間を自由にはできない。
3年は、誰にとっても3年です。
それは物理的には正しいでしょう。
しかし、時間は主観的なものでもあります。人それぞれの過ごし方、感じ方によって、時間は伸び縮みし、密度や濃さも変わります。
友人や家族と過ごす幸せな時間。
好きなコンテンツ、たとえば本や映画、音楽などに夢中になる時間。
スポーツや趣味に没頭する時間。
旅先で新たな発見をする時間。
主体的に何かを学ぶ時間。
そんな時間は、あっという間に感じられるものです。
でも、その時間は、ただ早く過ぎているわけではありません。
その経験はあなたの中に確実に積み重なっていきます。
そして、その積み重ねが、あなたという人間を形づくる。
一方で、あっという間に過ぎてしまう、でも、中身のない時間もあります。
スマートフォンでゲームをしているうちに、あるいは、なんとなく動画を見ているうちに、気づいたら10分、20分、1時間が過ぎていた——そんな経験は、私にもあります。
そういう時間は、溶けて、流れて、消えていきます。
自分の中には、ほとんど何も残らない。
現代は「アテンション・エコノミー」の時代だと言われます。
アテンション、つまり人々の注意力や集中力が、ビジネスの利益につながる時代です。
誰かの注目、アテンションを集めることでお金が動く。
それが、今の社会の仕組みです。
スマートフォンは、とても便利な道具です。もはや、それなしでは私たちの生活は成り立たないほどです。
でも、頭の片隅に置いておいてほしい。
あなたのアテンション——集中力が、誰かに狙われているということを。
アテンションを奪われているとき、あなたは他人のために、自分の貴重な時間を費やしています。
他人の人生を生きている、と言ってもいい。
その時間は、ただ、溶けて流れていきます。
自分の人生を豊かにするには、自分の集中力を、自分自身のために使わなければなりません。
時間を積み重ねて生きるのか。
溶かして、流してしまうのか。
選ぶのは、私たち自身です。
この学校には、先生方や仲間と一緒に、充実した時間を過ごせる、学びや活動の機会がたくさんあります。
どうか、素晴らしい経験を積み重ねてください。
3年後、諸君が、この千葉商科大学付属高校という滑走路から、自分だけの空へ、自分の意志で、力強く飛び立つ姿を―――私たちは、心から楽しみにしています。
今日のSHODAI

新入生諸君、入学、おめでとう!